- 「買ったばかりなのに、カシミヤやウールよりも毛が抜けて、他の服に付くのが気になる」
- 「高価なコートだから自宅で手入れしたいけれど、失敗して縮むのが怖くて手が出せない」
- 「クリーニングに出したいけれど、安い店で風合いを台無しにされたくない。かといって高額すぎるのも不安」

カシミヤよりも繊細でデリケートなアンゴラ素材。その極上の肌触りと引き換えに、実は特別な知識と技術が求められる「非常に手がかかる高級獣毛」です。
アンゴラコートの寿命を縮め、風合いを失わせる一番の原因は、素材の特性を無視した「ちょっとした誤解」や「判断ミス」にあります。特に「手軽に済ませたい」という気持ちからくる自宅洗濯の失敗は、二度と元に戻せない残念な結果を生んでしまうことも少なくありません。
この記事では、失敗を回避し、アンゴラコートの価値を10年間保ち続けるための「プロの判断基準」をお伝えします。



宅配クリーニングサイトを10年以上運営してきた管理人が、大切なコートを守るための知識をあますことなくお伝えしていきます。
アンゴラコートの特性と高級獣毛素材(カシミヤ・モヘヤ)との違い


アンゴラコートの適切な手入れと失敗回避は、まずその「繊維の仕組み」を理解することから始まります。なぜアンゴラはこれほどまでに優しくてデリケートで、毛が抜けやすいのでしょうか。
アンゴラ(アンゴラ兎)繊維の構造と魅力
一般的に「アンゴラ」と呼ばれるのは、アンゴラ兎から採取される毛を指します。この素材は、ウールとは全く異なる「特別なお手入れ」が必要です。
アンゴラの繊維は、断面がマカロニのように中空構造(ホローファイバー)になっており、表面の鱗片(キューティクル)が非常に少ないです。まるで赤ちゃんの肌のようにデリケートで滑らか。
この構造こそが、ウールの約3倍とも言われる圧倒的な保温性を生み出しています。しかし同時に、「繊維同士が絡まりにくく、毛が抜けやすい」というデリケートさの要因にもなっています。



アンゴラの特性を理解しておくことがアンゴラコートを長く愛用するための第一歩です。
カシミヤ、モヘヤ、ウールとの違い
アンゴラがどういったものなのか正しく理解するため、混同されやすい他の高級獣毛素材との違いを整理しました。
| 項目 | アンゴラ(アンゴラ兎) | カシミヤ(カシミヤ山羊) | モヘヤ(アンゴラ山羊) |
|---|---|---|---|
| 保温性 | 最も高い(ウールの約3倍) | 高い(アンゴラに次ぐ) | やや低い |
| 毛の抜けやすさ | 最も抜けやすい (中空構造と鱗片の少なさ) | やや抜けやすい | 比較的抜けにくい |
| 光沢 | シルクに似た強い光沢 | 独特のしっとりとした光沢 | ハリとコシのある強い光沢 |
| デリケートさ | 非常にデリケート (摩擦・水に弱い) | デリケート (水ジミになりやすい) | 比較的耐久性がある |
「アンゴラ」と名の付く動物には兎と山羊がいますが、通常コート素材で「アンゴラ」といえば兎の毛を指します。アンゴラ山羊の毛は「モヘヤ」と呼ばれ、区別されます。



この比較からも分かる通り、アンゴラは保温性や風合いが最高級である反面、「毛抜け」「水濡れ」「縮み」に対するリスクも最も高い素材なのです。
アンゴラコートクリーニング特有のトラブルと解決策


ここからは、最も気になるトラブルと解決策、そして失敗が招く「修復不可能なリスク」について具体的に見ていきましょう。
「自宅で洗濯したい」を諦めるべき基準
自宅での洗濯は、高級アンゴラコートの風合いにとって「取り返しのつかない結果」につながる最大のリスクです。
「クリーニング代を節約したい」という気持ちは分かります。ですが、アンゴラは水と摩擦に極端に弱く、一度縮んだりフェルトのようにゴワゴワに硬化したりすると、プロの技術をもってしても元の滑らかさに戻すことは困難です。
節約のつもりが、縮みの修復費用にコート代の半分以上がかかったり、最悪の場合はもう着られなくなったりします。
以下の項目に一つでも当てはまる場合は、迷わずプロのクリーニング店に相談しましょう。
- 汚れが広範囲に及んでいる(全体的な洗浄が必要)
- アンゴラの混率が50%以上である
- 水洗い不可の洗濯表示がある
- 少しでも不安を感じる
避けられない「毛抜け」と着用時の3つの対策
毛抜けはアンゴラコートの「宿命」とも言えます。繊維が軽く定着力が弱いため、わずかな摩擦でも抜け落ちてしまうのです。



毛抜けは3つの対策でストレスを大幅に軽減できます。
1.摩擦の徹底回避
ショルダーバッグ、リュック、車のシートベルトなど、特定の場所に集中して摩擦がかかる行為は避けましょう。毛抜けと毛玉を一気に加速させてしまいます。
2.連日着用を避ける
繊維に休息を与えるため、1日着用したら2〜3日休ませてください。湿気を飛ばし、繊維を回復させることが重要です。
3.専用ブラシでのケア
帰宅後は、必ずカシミヤ・アンゴラ用の柔らかいブラシで、優しく毛並みを整えながらホコリを払う習慣をつけましょう。
【重要】なぜ虫食いが起きる?汗を落とせる技術力の高い業者に任せるのが鍵
「しっかり洗って保管したはずなのに、虫食いにあった」というトラブルが後を絶ちません。虫食いトラブルには化学的メカニズムが存在します。
一般的なドライクリーニング(石油系溶剤)は「油汚れ」を落とすのは得意ですが、汗などの「水溶性タンパク質」を落とすのは非常に苦手です。
動物性繊維であるアンゴラに残った目に見えない「汗(タンパク質)」は、時間をかけて酸化・黄変し、衣類害虫にとって「栄養満点のごちそう」となります。



シーズンオフ前には「汗汚れを物理的に除去する専門ケア」が必須です。
アンゴラコートの「寿命」を延ばす日常ケア


アンゴラコートを長く着続けるためには、日々のちょっとした習慣が大切です。
適切なブラッシングとNG行動
毎日のブラッシングは、風合いを保つための最も手軽で効果的な「予防策」です。ホコリや花粉、絡まった繊維を整え、毛玉の発生を抑えます。
ブラシ選び
必ずカシミヤ・アンゴラ用の「柔らかい毛」のブラシを選んでください。(馬毛や山羊毛などがおすすめです)
正しい手順
- 優しく、下から上へ軽く毛を逆立ててホコリを浮かせます。
- その後、上から下へ一方向になでるように毛並みを整えます。
NG行動
- ゴシゴシ擦る
- 強く叩く
- 粘着ローラー(コロコロ)を使用する(※繊維が抜ける最大の原因になります)



「優しく扱う」という意識を持つことが、美しさを保つ最大の秘訣です。
ここでお話ししているのはアンゴラコート特有のケアです。
アンゴラ特有のケアに加え、コート共通でおさえておきたいメンテナンス方法や、クリーニング前後の注意点もあります。詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
▶︎ 【関連記事】コートクリーニング虎の巻!コートのクリーニング前の注意点や返却後の正しい保管方法
シーズンオフの保管環境
クローゼットの環境を整えることは、アンゴラコートへの「投資」です。湿気や直射日光による劣化を防ぎましょう。
- ハンガー: 型崩れを防ぐため、必ず厚みのある幅広ハンガーを使用してください。
- 場所とチェック: 通気の良い場所に吊るし、季節の変わり目には一度クローゼットを開けて、虫食いやカビの兆候がないか確認する習慣を持ちましょう。
オフシーズンの保管には、クリーニングの保管サービスもおすすめです。
失敗しない!アンゴラコートのクリーニング店選び


アンゴラコートをクリーニングするにあたって、「安さ」だけで店を選ぶのはリスクが高すぎます。「品質」と「技術」で業者を選ぶことも大事になります。
高級素材を熟知した店を見極める3つのポイント
アンゴラの風合いを保つには、ドライクリーニングだけでなく、汗などの水溶性の汚れを「風合いを損なわずに除去する特殊技術」が不可欠です。以下の3点をチェックしましょう。
1.高級獣毛の専門実績があるか
カシミヤやアンゴラといったデリケート素材の専門コースや、実績が明記されているか確認しましょう。
2.「Wクリーニング(ウェット)」の提案があるか
ドライ洗浄(油汚れ除去)に加え、特殊な水洗い(汗汚れ除去)を組み合わせた「Wクリーニング」を提案できるか。これが、黄ばみや虫食いを防ぎ、風合いを保つためのプロの最適解です。
3.「手仕上げ」の技術があるか
機械任せではなく、職人がアイロンがけや毛並みの調整を手作業で行っているか。アンゴラは手仕上げでなければ、その極上の風合いを蘇らせることはできません。



これらの技術を持つ信頼できるプロに任せることが、失敗を回避し大切なコートを守るための大事なポイントです。
アンゴラコートのクリーニング料金は平均2,700円
本記事では「品質」と「専門性」を重視しましたが、具体的な費用目安を知りたい方もおられると思います。
同等の高級素材であるカシミヤコートのクリーニング料金をご紹介しますね。
| 業者名 | 上質 | チェーン | パック | 日数 |
|---|---|---|---|---|
| イーピュア | 1177 | ○ | 5営業日 | |
| GiVu | 1211 | ○ | 3日 | |
| フラットクリーニング | 1237 | ○ | 4日 | |
| ホワイト急便(宅配) | 1256 | ○ | 7営業日 | |
| ネクシー | 1307 | ○ | 5日 | |
| ラクリ | 1318 | ○ | 4営業日 | |
| ココアラ | 1330 | ○ | 3営業日 | |
| フランス屋 | 1332 | ○ | 5営業日 | |
| クリーニング東京 | 1357 | ○ | 2日 | |
| 美服パック | 1364 | ○ | 3営業日 | |
| TSUMUGU | 1472 | ○ | 6営業日 | |
| 十兵衛 | 1537 | ○ | 6日 | |
| ヤマトヤクリーニング | 1583 | ○ | 15営業日 | |
| せんたく便 | 1625 | ○ | 5日 | |
| ノムラクリーニング | 1650 | ○ | 即日 | |
| DEA | 1674 | △ | 3週間 | |
| リナビス | 1709 | ○ | 5営業日 | |
| クリラボ | 1775 | ○ | 3日 | |
| クリーニングモンスター | 1868 | ○ | 4営業日 | |
| クリーニングパンダ | 1870 | ○ | 3営業日 | |
| プラスキューブ | 2035 | ○ | 7日 | |
| モクリン | 2091 | ○ | 7日 | |
| 正直なクリーニング屋 | 2228 | ○ | 4営業日 | |
| モンクチュール | 2500 | ○ | 10日 | |
| リネット | 2510 | 2日 | ||
| リアクア | 2550 | 4営業日 | ||
| ポニークリーニング | 3410 | ○ | 1日 | |
| ニック | 3767 | ○ | 5営業日 | |
| クリコム | 4400 | 5日 | ||
| カジタク | 4400 | ○ | 2日 | |
| 白洋舎 | 5720 | ○ | 即日 | |
| ホワイト急便 | 5940 | ○ | 即日 | |
| ワードローブトリートメント | 8500 | 14日 | ||
| キレイナ | 8800 | 14日 |
(※料金だけでなく、保証や加工内容も含めて比較検討することをお勧めします)
全35社の平均価格は2,732円。おおむね2,700円くらいが料金相場といえそうです。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてくださいね。
▶︎ 【関連記事】高級コートのクリーニング料金は?カシミヤコートの35社料金比較
アンゴラコートクリーニングにおすすめの業者3選
アンゴラなら本命「リナビス」
リナビス
- 5点:9,810円(1点あたり1,962円)
- 10点:14,900円(1点あたり1,490円)
- 20点:23,500円(1点あたり1,175円)
- 送料:無料
- 価格:
- 品質:
- 日数:
| タイプ | パック |
|---|---|
| 最短納期 | 5営業日 |
| 高級獣毛実績 | 毛皮コースあり、ハイブランド実績多数 |
| Wクリーニング | 汗抜き加工(+550円/点) |
| 手仕上げ | 全品手仕上げ |
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 対応衣類が豊富 高品質クリーニング 12か月保管無料 子供割50%OFF | パックタイプのため少量では利用しづらい 装飾品の多いドレスは取扱不可 ポリウレタン素材も取扱不可 |
最初におすすめするのは「リナビス」です。パックタイプであり上質素材や装飾品・付属品での追加料金は無し。静止乾燥・自然乾燥メインであり全品手仕上げ。アンゴラコートにとってうれしいのが、毛玉・毛取り無料、毛玉防止加工無料。毛玉ができづらくなるのはうれしいですよね。保管が12か月無料のため衣替えにもぴったりです。1シーズンに1回のメンテナンスなら最初にチェックしておきたい業者になります
コスパ重視なら「ネクシー」
ネクシー
- ハーフコート:2,150円
- ロングコート:2,530円
- 5点: 8,800円(1点あたり1,760円)
- 10点: 10,800円(1点あたり1,080円)
- 15点: 14,800円(1点あたり987円)
- 送料(単品):2,400円(7,800円以上の利用で無料)
送料(パック):無料
- 価格:
- 品質:
- 日数:
| タイプ | 個別/パック |
|---|---|
| 最短納期 | 5日 |
| 高級獣毛実績 | ハイブランドおよびアンゴラについて公式に記載あり。中の人洗濯ハカセの記事内で多数の実績あり |
| Wクリーニング | 基本的に無料ですがクリーニングに出す際に注記しておくと安心です |
| 手仕上げ | 全品手仕上げ |
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 装飾品や素材で追加料金がない 全品手仕上げ パックタイプを含めコスパが高い | 単品だと送料がネックになり、利用しづらい |
次におすすめするのは「ネクシー」です。コートを単品で出したい時に便利な業者ですね。素材や装飾品の追加料金なし、全品手仕上げ、自然乾燥メインとお洒落な服に優しい業者です。アンゴラコートをクリーニングという面から見ると、最終工程での毛玉取りと自然乾燥が優秀ですね。乾燥方法の中でもっとも洋服へのダメージが少ないのが自然乾燥です。シーズン中にクリーニングするなら単品でもパックでも非常にコスパが高いです。
品質最重視なら「キレイナ」
キレイナ
- コート: 8,800円
- シミ処理: 1,000円~
- 黄ばみ処理: 1,650円~
- 送料:2,200円(11,000円以上の利用で無料)
- 価格:
- 品質:
- 日数:
| タイプ | 個別 |
|---|---|
| 最短納期 | 2週間 |
| 高級獣毛実績 | 毛皮取扱あり、ハイブランド実績多数 |
| Wクリーニング | 水洗いメイン |
| 手仕上げ | 仕上げについての記載なし。動画では静止乾燥メイン |
| メリット | デメリット |
|---|---|
| テレビ出演実績あり クリーニングのビフォーアフター実績を多数掲載 ハイブランドを得意とする高級クリーニング | 入口の料金が高く、各種処理でも料金がプラスされるため料金が読みづらい |
最後におすすめするのは「キレイナ」です。ハイブランドやウェディングドレスといった取扱が難しい洋服を日常的に扱っている高級クリーニングですね。その分、料金も高く最低でも8,800円~です。シーズンごとのメンテというより傷んでしまったアンゴラコートをトップコンディションに戻す使い方がメインになります。信頼度についてはトップクラスで、クリーニングの取扱実績を公式に多数載せているだけでなくテレビにも出演実績があります(公式YOUTUBEに動画が掲載されています)。検品から乾燥までクリーニング工程がすべて公開されていますので、本当に綺麗になるのか心配な方は、観ることで不安が解消されると思いますよ
まとめ
衣替えシーズンにまとめてクリーニングして保管してもらうなら「リナビス」、シーズン中のクリーニングなら「ネクシー」、トップコンディションに戻したい時やトータルメンテナンスなら「キレイナ」という使い分けをされると良いでしょう。
アンゴラコートのクリーニングまとめ


アンゴラコートを長く美しく保つための最終チェックリスト
大切なアンゴラコートの寿命は、「安さ」ではなく「知識」と「技術」によって決まります。最後に、今日から実践できるチェックリストをご確認ください。
| 項目 | 実行内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 日常ケア | 帰宅後、専用ブラシで優しくブラッシングする | 毛抜けと毛玉の予防 |
| 着用頻度 | 連日着用を避け、繊維に休息を与える | 繊維の回復と寿命延長 |
| 自宅洗濯 | 不安がある場合は絶対に諦める | 修復不能な失敗の回避 |
| 保管前 | 「Wクリーニング(汗抜き加工)」指定でプロに出す | 汗汚れ(虫食い原因)の完全除去 |
| 業者選び | 安さよりも「手仕上げ」「実績」で選ぶ | 風合いを最大限に蘇らせる |
これまでお話ししたことが「アンゴラコートを今後10年愛用できる一着にする」ためのお役に立てれば幸いです。
コート全般についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。






